本記事は2026年1月30日(金)に公開を終了します。
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営業部の方から残業代の支給額が正しいかどうかの問い合わせを受けました。
この金額で間違いないでしょうか?
あなたはどう思う?
残業代がどのようなルールに則って計算されなければならないかを理解していれば、答えは分かるでしょ。
正直、いつも給与計算ソフト任せで残業の時間が合っているかどうかのチェックしかやっていないので、判断ができないです。。。
残業計算は給与計算業務の中で大きな割合を占める仕事だから、しっかりと理解しないとね!
給与計算ソフトに頼ってしまう気持ちはわかるど、仕組みをしっかり理解しないと、 問い合わせの対応が悪いという理由で、労務リスクになることだってあるんだから!
ろ、労務リスク。。。
日々の業務に追われていて、給与計算に関する理解を後回しにしていました。
これを機にしっかりと残業代の計算ルールを覚えるようにします!
いい心がけね!
せっかくだから給与計算ソフトの設定も正しいルールに基づいたものになっているか、確認をお願いね!
今月の給与計算が終わってからで良いから!
はい!
ただ、1人でやるのは不安なので、お付き合いいただけると助かります!
(ものの頼み方が上手くなってきたわね。。。)
目次
1.割増賃金とは
割増賃金とは、使用者(≒会社)が労働者に「時間外労働」「法定休日労働」「深夜労働」をさせたときに支払わなければならない賃金です。
割増賃金の趣旨は、通常の勤務時間とは異なる時間の勤務に対して、労働者に補償を行うとともに、使用者に経済的負担を課すことによって、時間外労働等を抑制することなどにあります。
2.基礎賃金とは
残業代を算出する第1歩は、労働者ごとの1時間当たりの基礎賃金額を算出することから始まります。
1時間当たりの基礎賃金は普段の賃金から決まる「基礎賃金」の額を、月の所定労働時間で割って算出します。
基礎賃金は、普段支給している賃金の額によって決定されます。
ただし、以下賃金については、労働と直接的な関係が薄く、個人的事情に基づいて支給されていることなどにより、基礎賃金に算入をしなくても良いこととされています(労働基準法施行規則第21条)。
- 家族手当
- 通勤手当
- 別居手当
- 子女教育手当
- 住宅手当
- 臨時に支払われた賃金
- 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金
上記賃金は、例示ではなく限定的に列挙されていることから、これらに該当しない賃金はすべて基礎賃金に算入する必要があります。
また、名称が一致しているだけではすべて基礎賃金への算入が不要というものではなく、実態が伴っている必要があります。
出展:厚生労働省「割増賃金の基礎となる賃金とは?」
例えば、下記の通り賃金が支払われている場合、住宅手当と通勤手当は基礎賃金への算入が不要なので、基礎賃金の金額は320,000円となります。
| 支給項目(月額) | 金額 | 備考 |
|---|---|---|
| 基本給 | 300,000円 | |
| 役職手当 | 20,000円 | |
| 住宅賃金 | 15,000円 | 基礎賃金への算入不要 |
| 通勤手当 | 20,000円 | 基礎賃金への算入不要 |
| 基礎賃金額 | 320,000円 |
3.1時間あたりの基礎賃金額の算出方法
(1)1時間あたりの基礎賃金額の算出方法
法令等で定められた1時間当たりの基礎賃金額の算出方法は以下の通りです。
| 項目 | 算出方法 |
|---|---|
| 時給制 | その金額 |
| 日給制 | 日給額÷1日の所定労働時間数 |
| 月給制 | 基礎賃金÷月の所定労働時間数 |
| 年俸制 | 年俸額÷1年間の所定労働時間数 |
(2)所定労働時間の算出方法
(1)の1時間当たりの基礎賃金額を算出する際の所定労働時間は下記の通り求めることとされています。
①月給制
毎月の所定労働時間数が一定の場合
→その時間
毎月所定労働時間数が変動する場合
→1年間における1ヶ月平均所定労働時間
②年俸制
→1年間の所定労働時間
③具体例
ここでは、最も多いと推察される「月給制、かつ毎月所定労働時間数が変動する場合」の所定労働時間にて、1時間当たりの基礎賃金額を計算してみます。
|
◆前提条件 基礎賃金額:320,000円 年間休日数:125日 1日の所定労働時間:8時間
◆1ヶ月平均所定労働時間数 1年間における1ヶ月平均所定労働時間は下記の計算式で求めることができます。 1年間の所定労働日数 × 1日の所定労働時間 ÷ 12
よって、この場合の1ヶ月平均所定労働時間は下記の通りとなります。 (365 - 125) × 8時間 ÷ 12 = 160時間
◆1時間当たりの基礎賃金額 月給制の場合の1時間当たりの基礎賃金額は、「基礎賃金÷月の所定労働時間数」なので、1時間当たりの基礎賃金額は以下の通りとなります。 320,000円 ÷ 160時間 = 2,000円 |
4.割増賃金単価の算出方法
割増賃金単価は、前述の1時間当たりの基礎賃金額に割増率を乗じた金額となります。
割増率は以下の通り定められています。
給与計算処理上、「時間外労働(法定超)かつ深夜労働を125%+25%=150%」「法定休日労働かつ深夜労働を135%+25%=160%」としている企業も多く見受けられます。
| 項目 | 割増率 |
|---|---|
| 時間外労働(法定超) | 125%(※) |
| 法定休日労働 | 135% |
| 深夜労働 | 25% |
(※)60時間超の場合は150%以上(中小企業は2023年4月1日より適用)
上記で算出した1時間当たりの基礎賃金額の場合、割増賃金単価は下記の通りとなります。
| 項目 | 計算式 | 金額 |
|---|---|---|
| 時間外労働(法定超) | 2,000円×125%(※) | 2,500円 |
| 法定休日労働 | 2,000円×135% | 2,700円 |
| 深夜労働(22時~翌5時) | 2,000円×25% | 500円 |
(※)60時間超の場合は2,000円 × 150% = 3,000円 以上となります。
5.割増賃金額の算出方法
割増賃金の額は、割増賃金単価にそれぞれの労働時間を乗じた金額となります。
上記で算出した割増単価の場合は下記の通り計算することとなります。
(1)時間外労働(法定超)
◆前提条件
1ヶ月の時間外労働(法定超)の時間が10時間だった場合
◆割増賃金額
2,500円 × 10時間 = 25,000円
(2)法定休日労働
◆前提条件
1ヶ月の法定休日労働が8時間だった場合
◆割増賃金額
2,700円 × 8時間 = 21,600円
(3)深夜労働
◆前提条件
1ヶ月の深夜労働が2時間だった場合
◆割増賃金額
500円 × 2時間 = 1,000円
6.端数処理について
上記はすべて計算の都合上整数で割り切れる額で計算を行ってきました。
しかしながら、実務上はこのようにきれいに数字が算出されることは少なく、1円未満の端数が発生することが多数であると考えられます。
通達(昭63.3.14基発150号)では、計算処理場生じた1円未満の端数の取扱いは、原則四捨五入することとされています。
- 1時間あたりの基礎賃金の算出額の端数処理→小数点第1位を四捨五入
- 割増賃金単価算出時の端数処理→小数点第1位を四捨五入
- 1ヶ月の割増賃金額算出時の端数処理→小数点第1位を四捨五入
これに基づき上記同様に計算してみると、下記の通りとなります。
|
◆前提条件 基礎賃金額:323,000円 年間休日数:125日 1日の所定労働時間:8時間 ◆1ヶ月平均所定労働時間数 (365 - 125) × 8時間 ÷ 12 = 160時間 ◆1時間当たりの基礎賃金額 323,000円 ÷ 160時間 = 2,018.75円 → 2,019円 ◆割増賃金単価 ①時間外労働(法定超) 2,019円 × 125% = 2,523.75円 → 2,524円 ②法定休日労働 2,019円 × 135% = 2,725.65円 → 2,726円 ③深夜労働 2,019円 × 25% = 504.75円 → 505円 ◆割増賃金額 ①時間外労働(法定超):9時間45分の場合 2,524円 × 9時間45分 = 24,609円 ②法定休日労働:6時間15分の場合 2,726円 × 6時間15分 = 17,037.5円 → 17,038円 ③深夜労働:2時間15分の場合 505円 × 2時間15分 = 1,136.25円 → 1,136円 |
ただし、上記と異なる方法で計算した場合であっても、算出される金額が法定の金額を下回らない限り法違反とは判断されません(昭24.1.28基収3947号)。
よって、端数処理時にすべての端数を切上げるといった取扱いは問題ないと考えられます。
7.まとめ
正しく割増賃金を算出し、支給することは、法令違反の是正、労務リスクの低減に直結します。
休日数の変更時には割増賃金の計算もセットで変更するといったフローを組むことで、対応の抜け・漏れを防止できるでしょう。
- 割増賃金とは、使用者(≒会社)が労働者に「時間外労働」「法定休日労働」「深夜労働」をさせたときに支払わなければならない賃金です。
-
割増賃金額を算出するためには、下記の過程を経る必要があります。
①基礎賃金の算出
②1時間当たりの基礎賃金の算出
③割増賃金単価の算出
④割増賃金額の算出
- 1円未満の端数の取扱いは原則四捨五入する必要があるが、常に切上げる等法令を 上回る措置を行っている場合は問題はありません。
8.次回予告
次回は「いまさら聞けない社会保険と雇用保険の加入要件の違い」についてご紹介いたします。
お楽しみに!!
9.本日の一問一答
お問い合わせ内容
年次有給休暇の消化について教えてください。
現在弊社では年次有給休暇の消化を付与の新しいものから行っており、就業規則にもその旨明記しています。
この度中途採用した従業員から、付与の古いものから消化させなければならないのでは、との問い合わせを受けました。
年次有給休暇の消化は付与の古いものから行わなければならないのでしょうか?
業種:情報通信業 従業員規模:50~99名 人事経験:5年以上10年未満
回答
労働基準法では、年次有給休暇の消化を古いほうからとするか、新しいものとするかについての規定はございません。
この場合、民法(488条)の規定で、債務者である会社が指定することができることになります。
貴社の場合、就業規則で新しいものから取得させる旨の定めがなされているので、そのとおりのルールを運用することに法的な問題は発生しないと考えられます。
とはいえ、年次有給休暇の取得は古いものから行う会社が多数であり、中途入社で入社された従業員様の前職ではその運用が行われていたのだと推察いたします。
そのあたりを丁寧にご説明いただき、ご納得いただくことが当問題の解消に繋がるものと思われます。
また、中途入社された従業員様には入社時研修等で貴社の年次有給休暇の取得ルールを事前にお伝えいただくことで、新たな質問が発生することを防止することができると考えます。
現在公開されているTHE jinjer STREET JOURNAL
- Vol.1:時間外労働の上限規制について vol.1
- Vol.2:時間外労働の上限規制について vol.2
- Vol.3:同一労働同一賃金への対応について vol.1
- Vol.4:同一労働同一賃金への対応について vol.2
- Vol.5:フレックスタイム制の清算期間延長について vol.1
- Vol.6:フレックスタイム制の清算期間延長について vol.2
- Vol.7:法定休日の定め方
- Vol.8:年次有給休暇以外の法定休暇と法定外休暇
- Vol.9:今さら聞けない!割増賃金の計算方法
- Vol10:今さら聞けない!社会保険と雇用保険の加入要件の違い
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